大坂峠とその周辺

サイクリングコースガイド

大 坂 峠

 大坂峠を越えて引田へ 抜ける道は古くからある道で、屋島へ向う源義経もこの峠を越えていったと伝えられている。 当時の道は飛鳥時代の律令制により整備された南海道で、現在の県道1号線とは別のところを通っていた。 その後、江戸時代までは讃岐街道と呼ばれ阿波と讃岐を結ぶ要衝として発達してきた。 明治時代になってからは急坂の多かった古道が改修により緩やかな道となり、国道として認定されていた。 現在四国のみちとして残っている旧道はこの明治になって整備された道である。(古道も一部残っている。) 県道に移管したのは昭和28年。香川と徳島を結ぶ主要道の役割が海沿いの国道11号線に移ってから。 以来この道は時代から取り残され、ひっそりとした山道として余生を送っている。
 交通量の少ない寂れた道でも自転車乗りにとっては格好の練習コースで、板野側、引田側どちらから登っても勾配は緩く距離も適当なため、初心者の練習には うってつけのヒルクライムコースである。 休日の練習のメインとしては少し物足りない感がなきにしもあらずで、他のコースへ向う際のウォーミングアップを兼ねた前座として利用することが多い。 とりあえずコース紹介としては国道11号線を通って引田側から登ることにする。

 徳島市内を出たら、国道11号線を北上。 鳴門を過ぎると海沿いの道となり、アップダウンは少なくなる。 この辺りの海は北灘と呼ばれ、夏には穏やかな表情を見せるが、冬の季節風が吹きつける日には、寄せられた波のしぶきがパラペットを越えて道路まで飛んでく ることも珍しくない。 風がなければ快調に巡航するところだが、向い風となると30km/hを維持するのも困難になる。
 県境を過ぎるとすぐに小さなトンネルがあり、抜けると引田。トンネルの前後は緩やかな坂道になっていて、引田側へ下ると山肌に大坂峠へ登る道が刻まれい るのが見えてくる。 トンネルを出て最初の信号を左折すると山肌に刻まれた道への登り口となる。
 山道に入ると一気に道幅が狭くなる。最初は木に閉ざされて展望はないが、九十九折りを登るにつれて視界が開けてくる。 ガードレールの向こうに広がる引田の海岸線はなかなか壮観。自分の足で登ると、同じ景色でもクルマの窓から眺めるのとは一味違う。
 県境を過ぎるとさらに緩やかな勾配で山腹をトラバースしていく。 県境から約2.4kmで苔むした石垣の切り通しに到着。 ほとんどの自転車乗りはここを大坂峠と思っているが、国土地理院の地形図を見ると意外なことに県境が大坂峠になっている。 切り通しの部分が最高地点だし、地形的にも峠になっているので自転車乗りがそこを大坂峠と思い込むのも無理はない。 実は旧道時代は県境が峠になっており、県道1号線でも(地形としては峠でないにもかかわらず)県境を大坂峠と表記しているのだ。

 話はそれるが、私達がよく走る大坂峠周辺は何故か心霊スポットとして有名で、暗くなってからはあまり訪れない方がいいらしい。 私自身はそういう物が見える能力がないので、真偽のほどはよくわからないのだが、一部の自転車関係者だけしか知らない恐ろしい話があるというのも事実では ある。 個人的な意見を言わせてもらえば、心霊話よりも道路脇やガードレールの外側のゴミの不法投棄をなんとかしてもらいたい。 最近は以前よりは少なくなった感があるが、それでも不法投棄がゼロになった訳ではない。 ゴミ以外に捨て犬なども多い。私がこれまでに見た大坂峠での最も嫌な光景はある犬の死骸である。 その犬は道路脇に放置された犬小屋の中でミイラ化していた。犬を捨てた者は小屋に繋いだまま置去りにしたのである。 空になったエサ入れと餓死した犬の亡骸はあまりにも不憫な光景であった。

 さて、話を自転車に戻そう。切り通しを抜けると緩やかな下りに転じる。 板野側への道も曲がりくねってブラインドコーナーが多い。対向車には十分注意しよう。 平坦なところまで下りてくるとあせび比温泉がある。 さらに下って阿讃山麓広域農道と交差、その先の県道12号鳴門池田線との交差点を左折。 引き続き県道1号線を走るが、この辺りまで来ると、これが同じ路線か?というほど交通量が多くなる。藍住町を過ぎて名田橋を渡ると徳島市。 TOKUをスタートし、戻った場合の走行距離は70km弱である。板野側から登る場合はこの逆を辿ればよい。
 大坂峠だけでは物足りない場合は下図のように板野から阿讃山麓広域農道へ回るコースがお勧め。 練習でもよく利用するコースだ。市場の金清温泉までアップダウンをこなし、帰りは吉野川の堤上を走って戻る。 総走行距離は約120kmとなる。

大 串 岬

 大串岬は香川県さぬき市の瀬戸内海に突き出した小さな半島の先端にある。岬からは正面に小豆島、西には五剣山が望める大変眺めのよい ポイント。周辺は大串自然公園として整備され、讃岐ワイナリーを初めとする様々な施設が点在する。この公園は香川県の人にはよく利用されているようだが、 徳島県から訪れる人は少ない。しかし、津田から大串岬までの海岸線は適度なアップダウンと瀬戸内の穏やかな景観のサイクリングにはうってつけのコースであ る。
 大坂峠を越えて大串岬まで走るのはなかなか大変だが、板野町の田園パークからスタートすれば総距離は100kmくらいに収まる。大坂峠の後は引田から白 鳥を通過し津田の松原を抜けたところからから海岸沿いの道へ。後は約16kmのシーサイドコースを経て大串岬に到着する。津田から大串岬までが最も美味し い部分。この間だけを走るなら津田からスタートすれば良いが、距離的には小ぢんまりとしたファミリー向けのコースになる。