室戸岬室戸岬

Cycling Cource Guide


空と海

室戸岬灯台

四国東側、太平洋に突き出した先端が室戸岬。 土佐湾を挟んで対峙する足摺岬と並んで、四国を代表する岬のひとつ。 岬の先端部の山上に24番札所最御崎寺があり、さらにその先には室戸岬灯台がある。 周辺の海岸は室戸阿南海岸国定公園に指定されていて、ごつごつした岩の海岸と亜熱帯性の植物群が独特の景観を生んでいる。 灯台の下の国道55号線沿いには御蔵洞(みくろど)という洞窟がある。 この中で若き日の弘法大師は修行を積み、悟りを開いたといわれている。 修行中、洞窟の奥から空と海を見つめ続けていたことで、空海と名乗るようになった。

幹線道路の国道55号は土佐浜街道と呼ばれ、海岸沿いの平坦な道は信号がほとんどないうえに交通量も少なくて非常に走りやすい。 本コース紹介では東洋町野根から国道493号で四郎ヶ野(しろがね)峠を越え奈半利に出て、 国道55号で室戸岬を経由して戻るという大きな周回コースとした。 徳島からならクルマで出掛け、スタート地点を宍喰か甲浦あたりにすると距離的には無理がないだろう。 総走行距離は約100kmを少し超える程度で、難易度としては中級クラスとなる。 上級者なら徳島市内からの日帰りツーリングも可能だが、総距離約300kmとなり、比較的速いペースでも12〜13時間はかかる。 阿南からだと約250kmで10〜11時間。日和佐からだと約200kmで8〜9時間くらいが目安。(タイムは参考であり、脚力や風によって変わる。)


宍喰または甲浦〜四郎ヶ野峠    区間距離:14〜18km、 所要時間の目安:1時間

国道55号か ら493号へ
別役との分 岐、右の細い方が493号
四郎ヶ野峠へ の登り
野根山街道の 入口

スタート地点はクルマが駐車できる場所であることが条件。 本コースでの候補地としては宍喰駅や甲浦の白浜海水浴場の駐車場が適当と思われる。 宍喰駅の場合は駅舎東側の高架下の駐車スペース。 本来は駅を利用する人のためのものだが、鉄道を利用する人が少ないせいか大抵はガラ空き。 ただし駅舎に近い方は空けておこう。 白浜海水浴場の駐車場は海水浴シーズンを外せば、イベントでもない限り空いている。 キャンプ場も隣接しているので、低料金で宿泊も可能だ。 最近では海の駅もオープンし、帰りがけに地元の特産品をお土産として購入することもできるようになった。
宍喰または白浜をスタートしたら、国道55号を高知方面に向かう。 サーフィンで有名な生見を通過し相間トンネルのアップダウンをこなすと野根。 野根川大橋手前で国道493号、奈半利の標示が現れる。

標示に従い橋の手前の信号で右折し、野根川沿いに走る。 1.5kmほど上流にある押野橋を渡ると四国のみちの案内板がある。 案内板には消えかけた文字で次のように書かれている。

「八島千軒 野根山街道東部はいくつかルート変更がありましたが、いずれもここ八島で集結しています。昔からここは 街道登り口として宿場町あるいは交易市場として繁栄していました。 しかし、五代の大崩落による土砂でうずもれてしまい、今は昔の姿はありませんが、地下からは住居跡や耕地跡が発掘されています。 『八島千軒』という地名だけが昔の繁栄を今に伝えています。」

この話からは美波町(日和佐)に伝わる二見千軒寺屋敷の話を連想させる。 どちらも千軒もあった集落が大災害によって消失したという伝承だ。 ところが、この二つの話には大きな時代の隔たりがある。 二見千軒が洪水や大波で水没したのは13世紀の鎌倉時代のことだと伝えられているが、八島千軒が大崩落に埋もれたのは天保11年(1840年)、明治維新 のわずか18年前の出来事である。

四国のみちの案内板から先に進むとすぐに別役(べっちゃく)方面との分岐がある。 国道493号線は右側の細い道の方。 左側は中央線のある広い道で、標識を見落とせばそちらへ進んでしまいそうになるが、先に行っても493号とは合流していないので間違わないように。 分岐から四郎ヶ野峠までは標高差約420m距離約6kmの登り。 平均勾配約7%。県南の霧越峠や大越よりはややスケールが小さいが、勾配はきつめ。 前半は谷側の視界が開け、眼下に別役の集落を見下せる見晴らしのいい登り。 ただし、日陰がないので真夏は陽に焼かれるところでもある。 後半は樹木に視界を閉ざされる個所が増えるが、その分木陰が多くなる。 雨が多いせいか陽の当たらない個所になるとコンクリートの擁壁が緑色の苔でびっしりと覆われている。 勾配が緩くなってきたらまもなく峠にたどりつく。 四郎ヶ野峠は残念ながら展望がないが、野根山街道(* 1)の 入口があり、東屋や案内板があって休憩にはよい場所だ。


四郎ヶ野峠〜奈半利     区間距離:36km、 所要時間の目安:1時間30分

魚梁瀬ダム方面への分岐のアーチ橋
野友橋を渡る

四郎ヶ野峠からは奈半利までの長い下りとなる。 道と並行する矢筈谷川は飲めそうなくらいに済んだ流れ。 峠から5kmほど下ったところで、矢筈谷川は小川川に合流する。 この地点は竹屋敷に向かう分岐があるが、ここはそのまま直進。 なお、竹屋敷からは林道で吹越峠を経て宍喰へ戻ることができる。 ただし、未舗装区間があるのでMTB向けの道。 竹屋敷への分岐点からは川幅も道幅も広がって走りやすくなる。 国道195号の別府狭付近の景色とやや似ていて、渓谷がなかなかいい感じ。

このエリアには林道がたくさんあって、それを目指して入ってくるオフロードバイクが結構多い。 いったん広がった道も所々狭隘な個所が残っているので、対向には気をつけよう。

竹屋敷への分岐から7kmほど下ったところで、アーチ形のコンクリート橋が現れる。 県道12号との分岐で、この先に魚梁瀬ダム(* 2)がある。 コースとしては橋を渡らずにそのまま国道493号を直進する。 まもなく平鍋ダムのバックウォーターが現れる。 途中で平鍋橋を渡って右岸側へ移る。 平鍋ダムから約2.5km下流には北川温泉がある。 このあたりからは水田も多くなり、中流域という感じ。 さらに下流の中岡新太郎館のある柏木地区を通過すると北川奈半利道路のICが現れる。 阿南安芸自動車道の一部で、完成すれば室戸岬半島をショートカットし大幅に時間短縮が可能となるが、北川奈半利道路だけを見れば、何でこんな人家の少ない 所にこんな立派な道路が必要なのかと思うだろう。

野友まで来ると山が低くなって空が広くなる。 中流域からがらりと下流域の景観に変わる。 上流から中流、下流へと変化していく景観はまるで時代の移り変わりのよう。 こういう感覚は自転車ならではのもの。 クルマの窓越しではなかなか味わえない。

野友橋を渡る。 橋の上から下流を見ると左右の山の端が切れた箇所がある。 その向こうはもう河口。 そして、沖には太平洋が広がる。 橋を渡って左岸側に移り、 観光ポイントのモネの庭を通過すると奈半利。 間もなく国道55号に合流となる。



奈半利〜室戸岬   区間距離:29km、  所要時間の目安:1時間

羽根岬 ここ から室戸市
行当岬を回る と室戸岬が間近に
室戸岬の中原新太郎像

奈半利からは国道55号を東に進む。 羽根岬、吉良川を通過すると間もなく道の駅キラメッセだ。 スタートして50kmほど走っており、そろそろ本格的に補給が欲しくなる頃だが、本コース中にはコンビニがほとんどない。 キラメッセで食事をとるか、もう少し走って室戸市街のコンビニか室戸岬漁港にある海の駅で食事をとるのがいいだろう。

行当岬を回ると、室戸岬がはっきりと見えてくる。 間もなく室戸の街へと入っていく。 郵便局前の信号のある交差点まできたらコースとしては右折だが、そのまま直進すると300mほどでコンビニがあるので補給を行う場合は立ち寄ろう。 体力や時間に余裕のない場合はそのまま進むと、室戸岬を経由することなく、三津へショートカットできる。

岬へ向う場合は郵便局前の交差点から残り約6km。 途中の室戸岬漁港には海の駅のほか、イルカが飼育されている。 室戸スカイラインの入口を通過したら間もなく室戸岬の先端。 カーブを回ると中岡新太郎像が目に入ってくる。 岬の周辺は荒々しい岩が点在する乱礁遊歩道が整備されているが、レーサーシューズで歩くのはちょっと無理。 なお、室戸スカイラインを登っていくと24番札所最御崎寺(ほつみさきじ)と室戸岬灯台がある。 最御崎寺から先は尾根筋を通っていくが、近年では道路沿いの木々が高くなり、展望を得られる箇所は意外と少ない。 途中にはホテルやキャンプ場もあったが、今では営業されていない。

室戸岬〜野根   区間距離:32km、 所 要時間の目安:1時間

区間のほぼ中間にある夫婦岩
豪快なシーサ イドコースが続く

岬の周辺には土産物屋やユースホステルなどの宿泊施設が建っていて観光スポットとなっている。 岬を少し東に回ると逸話の残るビシャゴ岩が目を引く。 その反対側には冒頭で紹介した御蔵洞(みくろど)がある。 さらに、その先には弘法大師像と室戸TTのゴール地点のホテル明星(あけのほし)がある。 近年では海洋深層水の施設もできた。 岬の東側は間近に迫る背後の山とごつごつした岩の海岸が独特の景観を生んでいる。 太平洋の荒波が打ち寄せる荒々しい海岸は室戸阿南海岸国定公園を代表する景観である。 中でも鹿岡の夫婦岩は区間中最大のビューポイント。 野根までは似たような景色が連続し、ややもすれば単調な印象ではあるが、直線的に伸びる道は交通量が少なく、非常に走りやすい。 しかも、30km余りのこの区間中、信号があるのは三津と佐喜浜の2箇所だけ。

休憩&補給には佐喜浜のコンビニが利用できる。あとは宍喰までコンビニはない。 尾崎〜入木と過ぎて伏越ノ鼻を回ると野根。 野根大橋を渡ったところで室戸岬半島周回完了。 甲浦や宍喰をスタート地点にした場合は間もなくツーリング終了。 トータルの所要時間は約5時間。疲れた体を癒すには宍喰温泉が便利。 徳島や阿南から自走の場合は、戻るまであと3〜4時間である。




総距離:111〜115km
所要時間:4時間30分〜5時間


(* 1)野根山街道は奈良時代に整備された南海道の一部で、野根から尾根伝いに奈半利に至る総距離約36kmの旧街道である。 現在は四国のみちとしてハイキング等に利用されているが、途中には様々な史跡が残されている。 同じく南海道の一部で、屋島へ向かう源義経が通った大坂峠越えの讃岐街道と似ているが、讃岐街道(古道)は一部しか残っていないのに対し、野根山街道は現 在も昔の面影を残している歴史的にも貴重な自然歩道である。


(* 2)時間的に余裕があれば西日本最大のロックフィルダムを見に行くのもいい。 奥深い山の中に現れる巨大なダム湖には思わず圧倒される。 もし、魚梁瀬まで行った場合は493号へ戻らず、馬路村を経由して安田川沿いにコースを辿るのがいいだろう。 なお、魚梁瀬ダムへは海部川を遡り、大木屋小石川林道を通って行くこともできる。 大木屋小石川林道は未舗装なのでMTBでのツーリングとなる。 帰りは竹屋敷林道で宍喰へ抜けるのがいいが、MTBにしてはロングツーリングになるので、朝は早めにスタートする必要がある。